鴨居ファミリークリニック

cool head but warm heart

経鼻上部消化管内視鏡検査について

経鼻上部消化管内視鏡検査について簡単に説明します。皆さんは胃カメラと言う方がなじみがいいかもしれません。胃カメラの目的は、食道、胃、十二指腸(あわせて上部消化管)粘膜を直接観察し、病変を発見することです。食道がん、胃がん、胃十二指腸潰瘍、最近増加している逆流性食道炎等の診断が正確におこなえます。特に胃がんは日本人に多く発症する癌の1つであり、胃カメラによる早期発見でほぼ100%近く治癒が見込めます。 このような利点をもつ胃カメラですが、内視鏡という異物を飲み込んでもらうため、嘔吐反射という苦痛を伴うことが欠点でした。 この嘔吐反射を取り除くため、医療機関によっては鎮静剤を検査前に注射することがありますが、まれに呼吸停止やショックをおこしたり、検査後も鎮静剤の効果が遷延し、交通事故を起こす場合があり、危険を伴います。 当診療所で導入されている経鼻内視鏡はこの嘔吐反射がほとんど起こりません。 このため、鎮静剤も必要ありません。 また胃カメラという検査は非常に安全な検査です。わたしの胃カメラの検査件数は2万件を軽く超えますが大きなトラブルを経験していません。 

胃癌はまだまだ日本人に多い疾患です。 皆さん、ほんのちょっぴり勇気をだして胃カメラを受けてみては如何ですか?

 

検査の手順について 

1.診療所に着き、受付をしたら深呼吸をして、リラックス。 ガスコン水という胃の泡消しを10ml飲んでもらいます。

2.処置室で鼻の麻酔を行います。 シートに腰かけてもらい、両方の鼻腔にブリビナという血管を収縮する薬を噴霧します。 その後、両方の鼻腔にキシロカインビスカスという麻酔のゼリーを注入します(何十万人に一人ですが非常にまれにキシロカインビスカスにアレルギーの方がいますので、気分が悪くなったらすぐにビスカスを吐き出し、看護婦を呼んでください)。

3.ここで胃の運動を止める注射もします。緑内障と前立腺肥大がない方、75歳以下の方は原則としてブスコパンという注射を筋肉注射します。

4.いよいよ検査です。右を下にして横になります。体中の力を抜いてください。わたしの言う通りにしていれば、きっと楽に終わりますよ。

 

ペプシノーゲン法について

横須賀市の健康診断にペプシノーゲン法による胃がん検診があります。これは採血で行うという点で画期的なものです。しかも、従来のバリウムによる間接胃透視(検診で用いられる簡易胃透視)と同程度の胃がん発見率なのです。しかし、ここで誤解してはいけないのは、ペプシノーゲン法は血液中の胃がんの成分を直接測定しているわけではないということです。ペプシノーゲン法でわかるのは、慢性胃炎の存在です。この慢性胃炎(専門用語で腸上皮化生性胃炎)の粘膜は胃がんに変化しやすいので、ペプシノーゲン法が胃がん発見に利用されているわけです。実際、バリウム間接撮影に比べ、早期がんはよく見つかるような印象です(きちんとしたデータではなく、あくまでわたしの印象ですが)。それでも、実際に胃がんが見つかる方は1000人に10人以下です。

 

ヘリコバクターピロリ菌について

20年程前は、胃酸のため胃の中に細菌は常在しないというのが医学の常識でした。そのため、ピロリ菌が胃粘膜に常在し、しかも悪さをしていること(これを感染といいます)が発見されたときは大変な驚きでした。昔は胃十二指腸潰瘍はストレスで起こるといわれていましたが、今ではピロリ菌が胃十二指腸潰瘍の原因の1つであることが証明されており、除菌療法が治療の第一選択となっています。ピロリ菌はまた、胃がんの原因の1つではないかとも言われています。こういう話をするとすぐ除菌してくださいという人がいますが、日本人の約半分はピロリ菌に感染しているのです。もし、潰瘍やがんの原因がピロリ菌のみなら、膨大な数の日本人は消化性潰瘍や胃がんを患っていることになり、話はそう単純ではありません。ピロリ菌の除菌で食道炎が増加したり、胃の噴門部分のがんが増加するという報告もあります。現在、積極的な除菌は消化性潰瘍の患者さんのみ保健適応となっています。なお、除菌治療(抗生物質の一週間内服)で8割強の人がピロリ菌除菌に成功します。

 

費用について

胃カメラの費用ですが、一割負担の人で1500円から4000円、三割負担はその3倍の4000円から12000円です。どうして、幅があるかというと観察のみでよい方と何らかの病変があり生検等の精査が必要な方がいるからです。

ピロリ菌除菌の薬剤は一週間内服していただき、約3500円程度です。