鴨居ファミリークリニック

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大腸内視鏡検査について

現在、大腸がんの頻度は増加しており、胃がんを追い抜く勢いです。日本人の食生活の欧米化(肉類や脂肪分を多く食べる)によると推定されていますが、原因ははっきりしません。大腸がんは他の臓器のがんに比べて比較的たちが良く、進行がんで発見されても治癒もしくは長年にわたりコントロールできることが知られています(1例として39歳で肝転移のある大腸がんが見つかりましたが、治療により60代の現在もなお現役で活躍中の銀行員の方の闘病記があります 関原健夫 がん六回人生全快現役バンカー16年の闘病記 朝日文庫)。しかし、たちの良い大腸がんといえども、早い段階での対処が大事なのはいうまでもありません。大腸がんの発生には二通りあります。1つはポリープ(正確には大腸腺種)という前がん病変を経てできてくるがん、もう1つは正常な大腸粘膜の一部がポリープを経ずにがん化するというものです。どちらのほうが頻度が高いのかは現在も論争となっており決着はついていません(興味深いのは大腸がんの頻度が以前より多かった欧米の意見はポリープがん化説で、最近頻度が急増している日本が大腸粘膜直接がん化説をとっている点です。発生のメカニズムが何か違うのかもしれません)。このような理由から大腸がん対策の最大の目的は、前がん病変であるポリープとポリープを経ない早期大腸がんの発見と考えられます。現在、大腸の検査はレントゲン透視下でバリウムを大腸に注入して行う注腸造影と大腸内視鏡の2つがあります。この2つの検査の利点と欠点は上部内視鏡検査の項目で書いた胃カメラとバリウム胃透視のそれとあまり変わりありません。大腸内視鏡検査の一番の利点は直接病変を観察するということです。これによって、組織や細胞の検査(バイオプシー)をしたり、もうひとつ踏み込んでポリープ切除(ポリープをそっくり取ってしまう)という診断と治療を同時にしてしまうことができます。放射線被爆がないことも利点の一つです(注腸造影は被爆線量が多いため、妊娠可能な若い女性にはお勧めできません)。大腸内視鏡の最大の欠点は、2つあります。1つは大腸に直接器械を挿入するため穿孔してしまうことがあることです。大体1000例に12例発生すると言われています。当然、注腸造影では起こりません。もう1つは挿入時に不快感を伴うことですが、内視鏡自体の進歩と挿入技術の進歩でかなり改善されてきています。大腸内視鏡のその他の欠点として注腸造影に比べ、ひだとひだとの間の病変がわかりにくいことがありますが、内視鏡先端に透明キャップを装着することで解決されてきています。 当診療所では大腸がん検診(便潜血検査)で陽性の方に直接大腸内視鏡検査を行い、1cm以下のポリープが見つかれば、その場で切除しています。 切除した場合は2時間程度診療所で安静にしてもらい、帰宅としています。

 

わたしの大腸内視鏡挿入方法

大腸内視鏡挿入時の不快感の主な原因は内視鏡挿入時の腸管の過伸展でおこります。平たく言えば、腸に無理な力がかかって伸びてたわんでしまう状態です。特にS状結腸は長く、腹壁に固定されていないため、この過伸展が起こりやすく、大半の方はS状結腸の通過の際不快感を感じます。これを改善するため、わたしは無送気短軸保持挿入法を行っています。わざわざ‘わたし‘とつけたのは、挿入法はさまざまあるからです。具体的には、腸管に空気を入れるのを最小限にして過伸展を防ぎ、内視鏡先端につけた透明キャップで腸管のひだを折りたたみS状結腸を直線化して通過していくというものです。この方法でかなり患者さんの不快感は軽減しましたが、それでもより奥への挿入でS状結腸が再びたわんでしまうことがあります。この場合、介助の方に腸がたわまないように下腹部を押さえてもらい検査を行っています。横行結腸も腹壁に固定されておらず過伸展しやすい部位ですが、S状結腸と同様の方法で対処していきます。いずれにせよ患者さんに苦痛がないように常に細心の注意を払って検査を行っています。わたしの現在までの大腸内視鏡症例数は5000例を超えており、盲腸までの到達率は99%です。 ポリープ切除の例数は3000例以上です。 現在まで行った大腸内視鏡検査で穿孔した症例はありません。大腸ポリープ切除での重大な合併症は穿孔のほかに切除後の傷からの出血がありますが、これは4例の経験があります。 

*本郷メディカルクリニックの鈴木雄久先生が開発した挿入法。鈴木先生は人格・技術とも卓越した素晴らしい先生です。

 

大腸内視鏡検査の費用について

大腸内視鏡検査は観察のみの場合、観察に加えて病変の組織検査(バイオプシーといい診断のため病変の一部を採取する)を行う場合、観察に加えてポリープ切除(ポリープをそっくり取ってしまうため診断と治療を同時にできる)をおこなう場合に分かれます。費用は観察のみ、もしくは観察に病変の組織検査を加えることで、一割負担で2000円から4000円、3割負担で6000円から12000円です。大腸ポリープ切除の費用は一割負担で10000円前後、三割負担で30000円前後です。